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食感測定の原理

おいしさは、味や香り、色、食感などによって評価されます。リンゴのサクサクした感じやポテトチップスのパリパリ感など、「食品を噛んだときに出る音」は、食感の大切な要素です。これまで食感は官能検査や録音による分析がされてきましたが、被験者の個人差や録音方法の条件設定の難しさなどもあって客観的にとらえることは難しいものでした。

そこで『食感測定器』では、前歯に見立てたプローブに振動センサを取り付け、食品に貫入したときに出る振動(音)を直接測定しています。このセンサはx軸とy軸の「2軸センサ」で、プローブがサンプルに刺さるときの垂直振動と水平振動を別個に検出します。何かを噛んだときに、歯は縦にも横にも振動します。例えば、ポテトチップスを噛んだとき、歯の水平運動は空気を震わせ、本人や隣にいる人にはポテトチップスの割れた音が「パリッ」と聞こえます。同時に垂直振動は、歯の根元にある神経を通して脳に到達します。これについては、耳にヘッドホンをあて大音量で音楽を聴きながら食感の異なるクッキーを食べたときに、それぞれの食感のちがいが判るという研究があります。このことから、食感を評価するためには「耳から聞こえる音」だけでなく、歯の垂直振動も重要であることが分かります。

 

この測定器で得られる食感指標は、エネルギー値(J、ジュール)です。前歯に見立てたプローブは、天秤の左右のおもりの差で動きます。そして、振動強度と周波数とプローブ全体の重量から振動エネルギーを計算することができます。また、天秤のおもりの総重量を変えることによって「大人の食感」と「子どもの食感」を比べることもできます。

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これは、ポテトチップスを食感測定器で測定したときの波形です。縦軸はセンサからの電圧値、横軸は時間です。垂直振動と水平振動が一度の測定で記録されます。大きく振れているのが、前歯に見立てたプローブがポテトチップスを破壊したときの振動です。このときの音を取り出して、周波数帯域ごとにエネルギー値を計算します。測定した音は0~48,000Hzまで21個の周波数帯域に分けて記録されます。

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これは、ポテトチップスが割れたときの音を周波数帯域ごとのエネルギー値で表したグラフです。縦軸は食感のエネルギー値で、横軸は周波数帯域を表し、左が低音で右にいくほど高音になります。帯域番号18~21は超音波帯域で、ヒトの耳には聞こえません。このグラフでは、帯域番号が5~8(140~560Hz)で横振動が強く、ポテトチップスの「パリッ」という音の特徴が、この辺りにあることを示している可能性があります。

 

『食感測定器』では、測定条件を同じにすることで、万国共通のエネルギー値として比較することができます。農産物の年度ごとの変動や、加工食品のロットごとのちがいを評価することもできます。また、ネギのように辛みがあり官能検査が難しいサンプルでも食感指標が得られます。

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