top of page

粘弾性測定の原理

粘弾性とは、「粘性」と「弾性」を合わせた性質です。食品も含め、ほとんどの物は粘弾性をもっています。「おいしさ」の評価に食感は重要な要素ですが、“ふわふわ” “もちもち” “しっとり” のような音の出ない食感には、粘弾性が関係しています。

粘弾性を測定する方法としては、次の3つの方法が知られています。

 

1. クリープ法    :試料におもりをつけて、時間の経過による伸びを記録する。
2. 応力緩和法    :試料を瞬間的に引っ張って止め、時間の経過による力の減衰を測定する。
3. 動的粘弾性測定法 :二枚の板の間に試料を挟み、板を振動させて測定する。

 

1と2では一回の測定に時間がかかり、3では二枚の板に試料を挟むための調整が困難ですが、『粘弾測定器』では短時間で簡単に粘弾性を測定することができます。

 

物質の特性として、弾性では “ヤング率” “体積弾性率” “ずり弾性率” が知られていて、粘性では “体積粘性率” “ずり粘性率” が知られています。また、物体の物理的性質を表すものとして “ポアソン比” があります。これら6種類の指標について簡単に説明します。

 

体積弾性率 :物体を全体的に拡大したり縮めたりするときの変形率と力の比
体積粘性率 :物体の体積変化速度と、それを妨げる力の比
ずり弾性率 :物体を横に押したときの変形率と力の比
ずり粘性率 :物体がずれるときの変形速度と、それを妨げる力の比
ヤング率  :物体を一方向に伸ばしたり縮めたりするときの変化量と力の比
ポアソン比 :物体を上から押したときの横方向への変化と、上から押した距離の比

 

『粘弾測定器』では、サンプルの表面に平たいプローブを接触させ、そのプローブの重力だけで押し込みます。そのときのプローブの減衰運動から一度の測定で6種類の物理的指標を瞬時に得ることができます。
 

graph3.png

これは実測データのグラフです。縦軸はプローブの移動距離、横軸はサンプルにプローブが当たってからの時間をミリ秒(1/1000秒)で示しています。一旦プローブがサンプルに当たると、ある程度プローブは押し込まれますが、最深部まで到達するとサンプルの弾性によってプローブは押し戻されます。もしサンプルが「完全弾性体」であれば、プローブは上がったり下がったり、永久に動き続けます。しかしサンプルに粘性があれば、プローブの動きはそのうちに止まります。

figure1.png

このプローブの動きについては、左のモデルで説明できます。弾性は「バネ」で、粘性は「液体の入った箱」で示されていて、このモデルでは、弾性の要素が2つ、粘性の要素が1つ繋がっています。一つめのバネ(K1)が最初に縮み、二つめのバネ(K2)が粘性を調節します。粘性も弾性も持つ物質の複雑な動きが、これら3つの要素で表現できます。

はじめに述べた3つの測定方法について、クリープ法と応力緩和法では “体積弾性率” と “体積粘性率” が測定できます。動的粘弾性測定法では “ずり弾性率” と “ずり粘性率” がわかります。しかし、これらの測定方法で得られる指標だけでは、物性を表す6種類の物性値をすべて得ることはできません。

figure2.png

これは『粘弾測定器』で得られる指標の関係を示しています。この測定器では “ヤング率” “体積弾性率” “体積粘性率” を直接測定でき、ほかの3種類の値は計算で求められます。“ポアソン比” はヤング率と体積弾性率から、 “ずり弾性率” はヤング率とポアソン比から、“ずり粘性率” はヤング率・体積弾性率・体積粘性率から計算できます。また、ひとつのサンプル測定に要する時間は約30秒ほどですので、同一サンプルの物性が時間の経過とともに変化していくのを確かめることができます。

bottom of page